何年も前から、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や住宅型有料(住宅型有料老人ホーム)でのサービス囲い込みが問題視されています。そこに遂にメスが入ります。今回は問題について解説するとともに、今後どうなるのかについてお伝えいたします。
囲い込み問題とは?
サ高住の囲い込み問題とは、介護施設の入居者に、自社のサービスを必要以上に使わせることで、不当に利益を得ることです。前提知識として、老人ホームには2種類あります。①介護サービスが全部パッケージになっている施設 ②介護サービスを自分で選択して利用する施設(高齢者専用マンションのようなイメージ)。問題になっているのは②の方(サ高住、住宅型有料)です。
サ高住は、高齢者専用の食事付きマンションのようなイメージです。基本的には介護サービスはありませんが、そのマンションに介護事業所を併設することで居住者に介護サービスを提供しています。居住者は、そのサ高住併設の介護サービスを使ってもよいし、サ高住外の介護サービスを使っても構いません。選択の自由があります。しかし、居住者に選択させずに、半ば強引に併設の介護サービスを利用させているサ高住があります。これが囲い込み問題です。
具体的に何が問題になっているのか?
①居住者に介護事業所を選択させないこと ②過剰なサービスを提供していること ③サ高住の居住者以外にサービスを提供していないこと これらの問題は、介護ビジネスの実態をよく把握していない方からすると、とても悪質なように見えます。しかし、多くの場合は悪質ではなく、むしろ良心的にサービス提供しています。
①居住者に介護事業所を選択させない
サ高住は、どの介護事業所を利用するか選択させてなければいけません。ただし、基本的には居住者にとってはサ高住併設の介護事業所を利用する方がメリットがあります。訪問介護を例にとってみましょう。併設介護事業所の場合は、"同一建物減算"というものが適用され、利用料が10%程度安くなります。また、併設しているため、すぐそばに介護スタッフがいます。何か急に困ったことがあったときに、迅速に対応してもらえます。外部の事業所の場合、減算は適用されませんし、急に困ったことがあっても介護してもらうまでに時間がかかります。結論、メリットデメリットを比較したとき、外部の訪問介護事業所を選ぶ理由はほとんどありません。
デイサービス(通所介護)の場合、外部の事業所を利用する場合は、送迎が発生するため、1日あたり100円程度利用料が高くなります。また、送迎は複数の利用者を同時に送ることが多いため、乗車時間が30分以上になることが多いです。そのため、移動のことを考えると併設事業所を利用する方がメリットがあります。しかし、デイサービスは、サービス内容が多様化しています。例えば、リハビリや機能訓練、レクリエーション、食事、入浴設備など、各デイサービスが特徴を持っています。そのため、サービス内容を踏まえて事業所を選んだ時、サ高住外の事業所を選択することもあり得ます。
"居住者に介護事業所を選択させない問題"の本質は、選択させないことではなく、併設事業所を利用するメリットを整理できていないことです。整理して居住者に分かりやすく伝えることで、居住者側も気持ちよく事業所を選択することができ、結果的に併設サービスを利用してもらえるのです。
②過剰なサービスを提供している
実はこれが一番の問題と言っていいでしょう。介護保険は利用上限が決まっています。自宅で過ごされている方の場合、上限いっぱいまで介護保険サービスを利用する方は少ないです。しかし、サ高住に入居している方の場合、上限いっぱいまで介護保険サービスを利用している割合が高く、厚労省から問題視されているのです。
なぜこの問題が起きるかと言えば、「サ高住での介護」は「自宅での介護」以上に質の高い生活を求められるからです。自宅であれば介助無しで自分でトイレに行ける方でも、サ高住では介助付きでトイレに行くケースがよくあります。自宅では転倒リスクがあっても自己責任で生活しています。しかし、サ高住では転倒は厳しく見られます。そのため介助付きでトイレに行くことになるのです。このような違いから、自宅で暮らす方より、サ高住で暮らす方の方が介護保険サービスの利用量が増えます。
多くの施設では、無理やり介護サービスを使わせているというよりも、必然的に介護サービスが増えています。もっと言えば、上限を超えてしまう量の介護サービスを提供していながらも、居住者の経済的負担を考えて、上限を超えた部分は利用料を請求しない施設が多いです(ボランティア・タダ働きです)。実態は上記の通りですが、サ高住の外側から見れば悪質なことをやっているように見えてしまうところが、もどかしいところです。この実態については、ケアマネですら正しく理解できていないことが多いです。きちんとやっていることを示すために、サ高住として、独自に介護プランを作成し、介護サービスの必要性を示すことが重要です(※ケアマネが悪いわけではありません。ケアマネは施設の中身のことまで細かく把握できませんので)。
③サ高住の居住者以外にサービスを提供していない
介護事業者は「正当な理由なくサービス提供を拒否すること」はできません。近年、サ高住外の方へのサービス提供拒否は認められない風潮になっています。ビジネスモデル上、サ高住に訪問介護事業所を併設させて、施設の中だけでサービス提供するというのは鉄板であり、多くの施設がそのやり方をとっています。しかし、今後は近隣の利用者へのサービス提供が求められています。はじめは、サービス提供範囲を半径200m程度に絞っても構いませんので、少しずつ外部へのサービス提供を始めましょう。
10月から始まるケアプランチェック
10月から、新たにケアプラン検証が始まります。具体的には、次の2つの条件に当てはまるケアマネ事業所は、「当該居宅サービス計画に訪問介護が必要な理由等」を記載して、市区町村に届けなければなりません。①区分支給限度基準額の利用割合が7割以上 ②その利用サービスの6割以上が訪問介護サービス。これは、個人のケアプランごとではなく、事業所ごとの集計ですので、該当事業所は3%程度と言われています。
条件に当てはまったとき、行政指導されるわけでも、減算されるわけでもありませんが、理由を報告させるというのは個人的には厄介な嫌がらせのように感じています。そして、事業所ごとに単位管理をやれているケアマネ事業所はほとんどありません。おそらく、ケアマネが個別に単位を制限するようになります。そして、過剰に訪問介護の利用量を抑えるケアマネも出てくるでしょう。
今後のサ高住の戦略
10月からのケアプランチェックにより、「サ高住+訪問介護」というモデルは非常に経営が難しくなります。デイサービスや、訪問看護、訪問リハビリなど、複数のサービスも付加し、複合的にサービス提供することが求められます。今回のケアプランチェックは、まだ案の段階です。今後、どのようなルールになるかは分かりません。しかし、着実にルール変更は進んで行きます。特に「サ高住+訪問介護」というモデルの施設は、早急にビジネスモデルのリニューアルを検討していただけたらと思います。